食品を製造して販売したい・・そんな時には食品製造業の営業許可や届出が必要になります。
食品製造における許可業種は現在32業種。その中から製造・販売される食品に合わせた業種許可をとることになります。また、自治体独自の許可業種や届出業種がありますので、それは食品製造業の営業を行おうとする各自治体のHPや保健所などで確認をしてください。
*条例による許可業種の例
漬物製造業、ふぐ処理業、こんにゃく・ところてん製造業など
(2021年6月1日から、許可業種の全面的な見直しと「届出制度」というものが新設されますが、それはこちらで触れます)
食品製造業の営業許可を取るには、
・物的要件(施設基準)
・人的要件(食品衛生責任者)
の両方を満たす必要があります。
加えて、その食品についての説明をしなければなりません。
また、一箇所で複数の業種の許可を取ることはできません。
(これも、2021年6月から、複合そうざい業という新しい業種区分が作られます。
基準は厳しくはなるのですが、これを取ると複数種の食品の製造が可能になります)
施設基準
食品製造業の許可を取るには、まず、施設基準というものを満たさなければなりません。
施設基準には、全業種に共通する基準と、
それぞれ製造する食品の特性に合わせた、業種ごとに決められた基準があります。
共通基準としてはまず、住居部分と完全に区画された専用の食品製造施設が必要になります。
家庭の台所で製造することはできません。
とはいえ、一軒家やマンションの一室では許可が取れないのかというとそうではなく、
住居部分と完全に区画されていれば許可を取ることもできます。
ここで重要なのは「完全に区画される」ということがどういうことなのか、ということです。
これも詳細は各自治体の条例で定められた基準によるのですが、
概して、壁で区別され、出入り口は完全に閉めることができることが基準になっています。
開口部には虫害など防ぐための設備が必要になることも多いです。
他に建物の堅牢性や、製造する食品の取り扱い量に応じた広さ、
床の素材の耐水性も必要になります。明るさや換気についても必要な条件を満たすことが必要となります。
職員の更衣室や、便所と手洗いも必要になります。
業種ごとに決められた基準ですが、例えば漬物製造業ですと、空だる置場が必要になったり、惣菜製造業に多く見られる基準として、洗浄槽を2槽以上、つまりシンクを二槽以上設けることなどがあります。もちろんこれらは自治体によって細かく違いがありますし、「洗浄槽を2槽というのは、どういう状態であればいいのか」ということも基準が違いますので、営業を行う予定の施設の所在地を管轄する保健所に相談してください。
人的基準
食品製造業の施設には、食品衛生責任者を設置することが義務付けられています。
これは、講習受講で取得することができる資格です。受講資格は年齢だけで、学歴、国籍も不問です。
講習は各都道府県の食品衛生協会が開催しています。
座学と確認テストで、1日で終了して、その場で受講証明書を受け取ることができます。
費用は各都道府県の食品衛生協会でご確認ください。
年間数回、定期的に、場合によっては県内複数箇所で開催されています。
人気のある開催場所だと定員が埋まってしまう可能性もあるので、早めに準備しましょう。
営業許可申請書に、食品衛生責任者の名前等を記載します。
食品衛生責任者手帳の写しを添付する場合もあります。
時折「紛失してしまった」ということもあるので、確認しておいてください。
受講修了書番号がわかっていれば再発行も難しくないようです。
製造する食品についての説明
従来は、口頭で説明してもかまわない、という扱いの自治体もあったようですが、
今現在、その食品について、HACCPに基づく衛生管理書類を作成・添付することが義務付けられています。
HACCPに基づく衛生管理とは、施設全体や通常業務における一般衛生管理と、
食品製造の工程ごとに衛生上の危険箇所を策定して管理する管理方法、その両方をさします。
一般衛生管理については、HACCPに基づく衛生管理が2021年6月からすべての食品関連業で義務化されるので、
各自治体のHPでフォーマットを公開していると思われますので、それを利用するのもよろしいかと思います。
食品製造の工程ごとに衛生上の危険箇所を策定して管理する管理方法については、
1.食品の原材料から潜在的な食中毒の危険を探し出す
2.製造の各工程で、具体的には保存・洗浄・加工(加熱)の工程で、食中毒の危険があればそれを探し出し、その危険をどう無くしていくのかを書面に落とし込む
3.それを日々の業務の中で確実に行っているかどうかの記録表を作成する
という作業が必要になるかと思います。
1.2.3.それぞれ、「ハザード分析表」「製造工程図」「記録表」といった書類をご用意いただくことになるでしょう。
そういった書面を作成するにあたって、
原材料の仕様書などが疎明資料として添付できたらより確実な書類になると思います。
HACCPについての書面の作成は、保健所で相談に乗ってくれますが、
専門知識を持ったHACCPコーディネーターなどもお手伝いが可能です。
余談ですが、記録用紙があるわけですから、
許可を取得した後の日々の業務の中でこの書類は活用していかなければなりません。
その書類に落とし込んだ内容を理解した上で、
食品衛生上の危険を減らしていく大事な取り組みとして実行をお願いしたいところです。
食品製造業許可取得の流れ
計画
まずは、計画を立ててください。
・どんな食品を
・どこで
・どれくらいの量
つくるかです。
保健所への事前相談
ざっくりと計画を立てたら、保健所への事前相談をお願いします。
その際に、施設の平面図を用意してください。
基準に適合するかどうか、適合させるためにどういった手直しをしなければならないのか、の指導をされると思います。
ここで、「これくらいならいいだろう」「これくらいでかまわないと同業の人から聞いた」などと、
事前の相談なし、あるいは思い込みで改装工事などいれてしまうと、
もし実地検査の時に基準を満たさなかった場合、さらに手直しが必要になったり、
計画そのものの見直しが必要になり、営業の見込みに大きく影響してくるおそれがあります。
保健所は比較的かっちりとした基準を提示してきます。
それが費用の問題もあって実行しえない場合には、次善策の提案やすり合わせも行ってください。
製造する食品の種類によって取得する許可が変わってきます。
それは食品そのものの内容によります。
例えば、「おかずになる食べるトマトソース」を製造しようとするとき、
それが「おかずになるから惣菜なのか」「トマトソースだから調味料なのか」といったところで
判断をしなければならないことも起こってきます。
食品表示法も改正になっています。法改正に沿った食品表示の用意もしなければなりません。
食品表示を作成するのは営業者ですが、
その場合のアドバイスも必要に応じて受けることができます。
申請
書類が整ったら、いよいよ申請書提出です。
書類を確認して受理されたら、実地検査の日程を調整します。
この時に、手数料を納入します。
自治体によりますが、実地検査から1週間程度で、
改善等の必要がなければ許可が下りることになりますので、
営業開始の予定期日がある場合には、
実地検査の日程を計算に入れて申請する必要があります。
実地での施設検査
保健所の食品衛生監視員が実際に施設を訪問して検査が行われます。
平面図に書かれているものが実際に設置されているかや、
書面に落とし込んだ衛生管理が実際に可能なのか、などを確認されます。
施設が基準に適合していれば許可になり、食品営業許可証が交付されます。
交付された許可証は、食品衛生責任者のプレートと一緒に、施設内に提示してください。
その他
営業開始までの間に、従業員の検便結果を食品衛生協会に提出するよう指導されます。
その際に、「大腸ガンの検便ならしているのですが・・」と許可を取ろうとする業者の方に言われたことがあるのですが、
もちろんここは細菌についての検査の結果になります。
営業許可が出た後の手続きについて
更新
営業許可には期限があります。引き続き営業を行いたい場合には更新の手続きを行わなくてはなりません。期限満了日の約一ヶ月前としている自治体が多いですが、余裕を持って手続きを行ってください。
許可の受けなおし
以下の場合には営業許可の受けなおしが必要になる場合がありますので、保健所にご相談ください
・施設の増改築を行う場合
・営業所が移転するなどの場合
変更の届出
営業所の住所や、店舗の名称などを変更する場合には変更の手続きが必要になります。
許可を取るまでの必要期間
これまで書いてきましたように、書類の作成をして申請してしまったら
申請書類の内容と施設基準に合致しているかが重要ですが、
1週間前後で許可は下りると考えられます。
ですので、早く許可を取ろうと考えた場合には、
具体的な計画作成は言うまでもありませんが、
それに基づいた的確な書類作成と、施設基準を満たす設備を整えることが
大切になると思われます。
食品製造業許可申請やHACCPに関する書類作成のお手伝いをしております。
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